一度も実践に参加することなく米軍に没収された「幻の戦闘機」…。 この「震電」に、京都市立芸術大学彫刻科の助教授である中ハシ克シゲさんが注目しています。彼はこれまで「日本」をテーマに独自の彫刻表現を試みてきた特異な美術家で、その評価は高く、福岡市美術館や国立国際美術館(大阪市)などに作品が収蔵され、また2006年9月には、地元である滋賀県立近代美術館で個展が予定されています。 その中ハシさんが、自らの「作品=アートプロジェクト」として実物大の「震電」を「再現」しようとしています。市販されている1/48プラモデルを接写レンズ付きのフィルムカメラで拡大接写し、現像された約25000枚にのぼる紙焼き写真を張り合わせるというのです。 戦局は悪化の一途を辿っていた太平洋戦争末期、人々はどのような思いで震電の開発に関わり、どのような思いでその飛行する姿を見つめたのか。失われつつあるその記憶を掘り起こし、戦争のもう一つの実相にせまる内容です。戦争を知る世代の年齢はすでに70-80代に達しており、体験や記憶の風化が叫ばれています。本プロジェクトのように美術表現を通して世代間の対話を試みることは、次第に難しくなっています。その意味でも、是非この機会に本プロジェクトを実現させたいと思います。